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韓半島産蜻蛉目昆蟲誌
The Dragonflies of Korean Peninsula (Odonata)

jacket

著 者 : 李 承模 (Seung-Mo Lee)
発行所 : 正行社
体 裁 : 229pp. 18 col. pls., ハードカバー
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著者は 1996 年に韓国国立科学館報として「韓半島の蜻蛉目昆蟲」を執筆し,9 科 52 属 96 種を記録しているが,本著はその後の知見を加え,76 種の腹端部拡大図(一部外部生殖器を含む)と 77 種の標本カラー写真付きで 9 科 54 属(ミナミヤンマ属,トビイロヤンマ属を追加)107 種を収めている。

これはこれまでに記録された全種を示したもので,その中には疑問種(ミヤマカワトンボ,ミナミヤンマ),北朝鮮から採集されたと報告されている不確実な記録集(エゾアオイトトンボ,ルリイトトンボ,ハネビロエゾトンボ,エゾトンボ,コエゾトンボ)その後に採集または確認された追加種(マルタンヤンマ,オオギンヤンマ,マンシュウコヤマトンボ,エゾカオジロトンボ)が含まれている。

また前著にも疑問種として掲載されているニシカワトンボについては,詳細な見解が述べられている。なお,この文献によって従来日本固有種とされていたコシボソヤンマ,ホンサナエ,ネキトンボが韓半島にも分布していることが明らかになった。

同定は種レベルに留め,亜種名をつけていない。この点でギンヤンマ,タイリクアカネなどは日本と同じ亜種,タベサナエはタイリクタベサナエ,ショウジョウトンボはタイリクショウジョウトンボ,シオヤトンボはタイワンシオヤトンボであるが,モリトンボ,ミヤマアカネなどはいずれの亜種に属するか,いささか気になるところである,今後北朝鮮の詳細,確実な知見を得て確定することが望まれる。

近年韓国ではハングルだけで出版される傾向が強く,われわれは全く読めなくなってしまったが,この本は漢字交じりの韓国語で記されているので,漢字を拾い読みすれば大体判読できる。

その上「生息地および生態」「文献記録」「採集標本」「国外分布」のすべてが英訳とともに記されているので,非常に好都合である。なお,種名は韓国名と北朝鮮名が併記されていて,大戦中まで北朝鮮に在住した著者ならではの労作といえよう。

井上 清